製品開発ストーリー「アリアミストボリーナ」

ariamist bollina
ファインバブルシャワーヘッドのパイオニア

アリアミストボリーナ

製品概要
ファインバブルシャワーヘッド「ボリーナ」の名前を冠して、初めて発売された製品。通販サイトのシャワー部門ランキングで売上No.1を獲得するなど各種メディアで話題に。他社に先駆けてファインバブル機能を搭載し、お肌の汚れを吸着してやさしく洗い流します。入浴後の肌表面温度の上昇や肌のしっとり感も確認されています。2011年12月24日発売。

製品開発ストーリー

製品開発ストーリー「アリアミストボリーナ」

下請けの町工場からメーカーへ、
自社製品開発への模索

大手水栓バルブメーカーの進出によって下請けメーカーが次第に集まり、水栓金具で国内出荷額の約4割を占める一大拠点だった岐阜県山県市(旧:美山町)。水栓バルブ発祥の地と名付けられたこの場所が、TKS創業の地です。(当時の社名:田中金属製作所)

1965年の創業当時、私たちもまた水栓バルブ部品を手がける下請け業者でした。2001年、節水事業への参入をきっかけに「節水コマ」や「節水シャワーヘッド」など自社製品の開発に力を入れていました。2005年には、発売した節水シャワーヘッド「アリアミスト」が大手ショッピング番組で紹介され、1日最高15,000本を売り上げるヒット商品に。メーカーとして軌道に乗ろうとしていた矢先の2009年、大手取引先の内製化と取引先商社の不祥事により販売先がなくなるという危機的状況に陥りました。
債務超過が膨らむ中、開発部課長の退職も決まり、八方ふさがりの状態となってしまったのです。

製品開発ストーリー「アリアミストボリーナ」

厳しい環境から生まれた、
新しい分野への挑戦

しかし、入社を希望する開発者から届いた1通のメールをきっかけに転機が訪れます。大企業でも即戦力として十分に活躍できる高い技術がありながら、ボーナスすら出せない状態の当社への入社希望を知らせる内容でした。
私たちはこうして幸運にも新たな開発者を迎え、新製品開発を本格的にスタートしました。

2010年当時、知名度はまだまだ低いながらもその市場性が注目されかけていた「マイクロバブル※」。私たちはこの分野こそ今後期待される技術だとにらみ開発に着手したのです。

マイクロナノバブル:2010年当時の名称。現在の「ウルトラファインバブル」のことです。「ファインバブル」のうち、直径100μm未満で1μm(=0.001mm)以上の泡を「マイクロバブル」、それより小さい直径1μm未満の泡を「ウルトラファインバブル」と区別しています。

製品開発ストーリー「アリアミストボリーナ」

独自の特許技術
「μ-Jet(ミュージェット)機構」
の誕生

コストを抑えつつ高性能な機構を実現するためにさまざまな検討を重ね、試作を実施。数えきれないほど検証を重ねた結果、外気を取り込まず、水の中にある空気を使って超微細な気泡を発生する「キャビテーション方式」の採用を決定しました。

機構部の全長を極力短く、コンパクトで部品点数の少ない簡単な構造にするなど、製造にかかる負荷とコスト抑制の工夫を随所にとり入れました。特に苦労したのは、水を旋回させる部品の穴形状と角度。超微細な気泡を発生させるために簡易流体シミュレーションソフトを使用。内部にある穴寸法を最適化するための試行錯誤の連続でした。

その結果、内部の特殊構造によって、蛇口から流れ込んだ水が渦状となり、「台風の目」のような空間を作り出すと、そこに水流の圧力や速度の変化が加わり、極小の泡を発生させる仕組みとなりました。通常は気体の送り込みや圧力変化などに大掛かりな装置が不可欠なため、一般的に数万~数十万円程度の費用がかかる機構です。しかし水栓部品の製造で培った流水制御や切削加工の技術の活用により、小型・低コストの両方を実現することができました。

製品開発ストーリー「アリアミストボリーナ」

お客様の声がきっかけとなった
シャワーヘッド開発

「μ-Jet機構(ミュージェット)」と名付けたこの装置を搭載した第1弾製品「awawa(アワアワ)」を2011年7月に発売。水道の蛇口に設置するだけでマイクロバブルを発生するこの製品には、お客様から多くの喜びの声が寄せられました。

開発者本人が直接お客様から製品の評価を聞いてみたいとの希望から、取材可能な三重、愛知、岐阜在住の個人のお客様宅を訪問。この際に直接伝えられた「シャワーを作ってほしい」という声が、マイクロナノバブルシャワーヘッドの開発を推進する大きな力になりました。

μ-Jet機構:高速旋回液流とキャビテーションによる独自の発生方式

製品開発ストーリー「アリアミストボリーナ」

既存製品と金属加工技術の流用で
「アリアミスト ボリーナ」が完成

かなり厳しい経営状況という背景から金型製作※1は困難だったため、旋盤加工※2で製造できる部品の使用が量産の前提となりました。そこでシャワーヘッドのボディ部分は、節水シャワーヘッド「アリアミスト」のボディを旋盤加工し、マイクロナノバブルシャワーヘッド「アリアミスト ボリーナ」として流用する方針を決定。創業当時から地道に培ってきた金属加工技術のおかげで、この方法を選択するに至りました。

試作品の製作にもかなりの時間を要しました。決して恵まれているとはいえない開発環境の中に、開発者はたった1名。その1名が設計から試作、評価をループする日々でしたが、苦労の甲斐あって2011年12月24日、市場に先駆けてマイクロナノバブルシャワーヘッド「アリアミスト ボリーナ」が発売されたのです。

1金型製作:通常、量産のプラスチック製品は金型を製作し、ペレットという粒の原料を熱して液状にしながら流し込んで作ります。複雑な形状が可能で、比較的短時間かつ金型設計次第では低コストというメリットがある一方で、金型そのものが高額なため、資金が必要。2旋盤加工:対象物を回転させながら切削工具で削り出す加工方法。複雑な形状は困難なうえ、仮に加工が可能だとしても時間がかかるため高コストになるというデメリットがあります。

製品開発ストーリー「アリアミストボリーナ」

前例がない未知の分野を
切り拓くという困難

もっとも困難だったのは、エビデンスの導き方です。未知の分野ですので、試験方法・評価基準すらありません。そこで試験機関から測定機を借りることから始めました。お客様レビューを参考にしつつ、開発者自身の肌にひたすらシャワーをあてて試験条件を導きました。

当時、マイクロナノバブルのシャワーヘッドに関する市場の理解は皆無。節水のシャワーヘッドすら特別だった時代に、水に含まれた超微細気泡が特別な作用をもたらすことなど一切認識されていなかったのです。

この製品をより多くの方にお使いいただきたい。他社のマイクロナノバブルシャワーヘッドは15,000円程。手が届かなければ意味がないと考え、「アリアミスト ボリーナ」は販売価格を9,800円にしました。それでも価格が高いと批判され、販売当初はほとんど扱ってもらえませんでした。

製品開発ストーリー「アリアミストボリーナ」

実演販売を地道に続け、
あきらめない心が結実

「素晴らしい製品でも、理解されなければ作り手の自己満足で終わる」という考えから、2012年12月に東急ハンズ銀座店で実演販売を開始しました。1日で30本を販売するなど、予想以上の売れ行きに手応えを感じる日々。すぐに実績が評価され、毎週末に東京で実演販売を行うことになりました。また会社一丸となって地道に続けた実演販売が評判を呼び、各店舗から依頼が殺到。取り扱い店舗も一気に増加しました。その結果、テレビ東京の経済ドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」への出演依頼が舞い込んだのです。

番組の放送終了後、当社のシャワーヘッドは一気に注目を浴び、多くの方に購入いただくきっかけとなりました。

当社は、この時の挑戦する姿勢と困難を打破していく強い想いそのままに、今なおファインバブルの新たな可能性を追求するとともに研究開発を進めています。「すべての人にちょうどいいものづくり」に向き合い、新しい未来を創造していきます。

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